上質な私小説を読むような感覚に襲われます。懐かしいアルバムですが、今でも輝いています。おすすめ度
★★★★★
収録されている10曲はどれも質が高く、極上の短篇小説のような素晴らしい詩を持った作品群だと思います。勿論、曲の水準も相当高く、当時の音楽環境を考えますと時代をリードしていたのは間違いありません。
松任谷由実が、荒井由美時代の作品から少しずつ脱皮を試みた曲集です。イメージがアルバムごとに変るという批評もありましたが、やはり水準は高く今でも聞き惚れてしまいます。リアルタイムで聴いた発売当時の郷愁だけではない作品の存在感がそう思わせているようです。
冒頭の「ジャコビニ彗星の日」はその時代を生きた者だけが共有できる現象を歌に読みこんだもので、私小説的な味わいが感じられます。歌詞にも書かれたジャコビニ彗星が流れた1972年というとユーミンが18歳の時にあたります。多感な頃の思い出を読みこんだものなのでしょうね。
3曲目の「緑の町に舞い降りて」のポップな感覚は今聴いても色褪せません。
♪MORIOKAというその響きがロシア語みたいだった♪という印象的なフレーズが記憶に残ります。このような捉え方がユーミンらしさを生んでいるのでしょう。
ハイ・ファイ・セットもこの「緑の町に舞い降りて」を収録しており、大川茂さんのヴォーカルが味わい深いです。
アルバムタイトルにもなった「悲しいほどお天気」の歌詞を見ますと、美大を目指していた頃のユーミンの姿を彷彿としますし、「個展の案内の葉書き」の歌詞は、実話に基づいている、とユーミンも話していますので、相当私小説的な要素が強いアルバムなのは間違いありません。
今でもコンサートで歌われる「DESTINY」が収録されていますので、1979年12月に出たこのアルバムも再び若い世代の方々に聴いていただきたいと思っています。
70年代を締めくくるに相応しい名盤おすすめ度
★★★★★
初めて耳にして以来25年、荒井由美・松任谷由実作品で未だに所有している唯一のアルバム。
これぞ正にニューミュージック。ティンパンアレイに代表される日本の腕利きスタジオミュージシャンに支えられ、瑞々しい歌声が染み通るアルバム。J-Popの歴史的には"Destiny"(4曲目)収録のアルバムという位置づけがされるのだろうが、M1の『ジャコビニ彗星の日』での心情の描写、M3『緑の町に舞い降りて』などの情景・風景の描写など、現代のアーティストにはない感性に満ちている。
リアルタイム世代には郷愁を、新たなファンには驚きを感じさせてくれるだろう。
懐かしくてすぐに戻れるおすすめ度
★★★★★
昔聞いた曲ほどしっかり憶えていることがありますが、このアルバムはそんな曲ばかりです。曲は全体にシンプルで静かだと思いますが、逆にそれが楽曲の完成度を際立たせていると強く感じます。DESTINYはまるで私の曲だ〜と聞いていたことを思い出し、ちょっと赤面ものですが、今聞いてもまったく時代を感じさせません。オンタイムで聞いていた人は懐かしく、最近の曲しか知らない人はユーミン昔こんな感じだった、と聞くのも新鮮でいいと思います。とてもお薦めです。
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