『PEARL PIERCE』は、あるコンセプトを持ちながら一連の作品に仕上げていく、という手法を確立した年代のアルバムです。1982年6月の発売ですから、ちょうど四半世紀前のアルバムになりました。
本作のテーマである市井の若い女性の日常を取り上げ、ある局面を切り取り、鮮やかなスポットライトをあてることで、具体的な姿を浮かび上がらせ、内面に潜む深窓心理を表出させるという手法により、曲のコンセプトがより鮮明になっていった頃の作品です。
私小説的な出来事をテーマにして作品を創り出すだけでなく、ユーミンの詩の特徴である口語的とも言える散文を使用することにより、説明的な役割も果たしており、等身大の若い女性の感覚に近い人物像を再現するのに成功しました。
アルバム・タイトルの「真珠のピアス」は上質のポップスの香りを振り撒きながら、ジェラシーの持つ一面を鮮やかに描き出しています。言葉の魔術師ともいうべきユーミンの本領発揮とも言える曲です。
詩のリズムを大切にしながら、サビの部分に印象的なシンコペイションを多用した「DANG DANG」は、まさしく後世に残った名曲です。今聴いても全く色褪せていません。素晴らしい仕上がりですね。
世界的なA.O.Rの潮流に乗りながら、日本の音楽シーンを牽引してきた女王ユーミンが果たした役割は、一般大衆への浸透、普及化ともいうべきJ−POPの確立だったと思います。
「DANG DANG」の意外と知られていないいきさつおすすめ度
★★★★★
おそらくこのアルバムの核となるこの曲の2番の
「彼女は知らないなら友達になるわ それしか貴方に会うチャンスはないもの 今は」のくだり。
実はラジオリスナーのハガキから出来たフレーズであることはご存知ですか?
前作「昨晩お会いしましょう」に収録された「夕闇をひとり」にある
「あの人を愛してくれる人」というフレーズをテーマに「あなたならどうする?」という問いかけに
「友達になる。会えるチャンスがあるから」との回答があり、
ユーミンは「いいな、これ、もらい!」とコメント。
そしてその後発売されたこのアルバムで、その反応が嘘ではなかったことがわかりました。
このフレーズもさることながら、インパクトがありながらも限りなくリアリティ溢れる歌詞のすごさ。
段々と大きくなる悲しみを「土用波のように」と例えることを他の誰が出来るのでしょう。
また、この頃は変装してファミレスへ行き、周りにいる若いカップルの会話を盗み聴きして
ライターとしてのインスパイアを得ていたというユーミン。
アンテナは常に張り巡らせているというプロの姿勢ですね。
「DANG DANG」は間違いなく、彼女の作品の中でも10本の指に入る佳曲であると思います。
ユーミンの最高傑作。おすすめ度
★★★★★
紛れもなくユーミンの最高傑作です。
オープニングの「ようこそ輝く時間へ」のイントロから
ラスの「忘れないでね」のアウトロまで、完全に計算尽くしたアルバムです。
ちょうどこの1982年頃は米・西海岸AORの全盛期の頃ですが、
それをも凌駕するほどの正隆氏のシャレたプロデューシングに今でも舌を巻きます。
前作に収録された「守ってあげたい」や「カンナ8号線」のような
名刺代わりの一曲みたいなのはありませんが、
「真珠のピアス」や「DANG DANG」に代表されるように佳曲揃いでありつつ、
都会の初夏を描いたトータル性にため息さえ出るところです。
冬のアルバムが多いユーミンのパブリックイメージとはちょっと異なりますが、
ユーミンのソングライターとしての力を知るには絶好の一枚です。
「最高傑作」の根拠は、このあと「acasia」まで
約20年間夏のアルバムを制作しなかったことでしょうか。
思い出おすすめ度
★★★★★
個人的には、松任谷由美のオリジナルアルバムとしては一番好きです。もう20年近く聴いています。最初はFM放送からダビングしたカセット、15か16歳のころです。歌詞の本当の意味が、中年になってわかったような気がします。1〜5、7がとくに好き。ちなみに自分が持っているCDは、CDが初めて発売されたとき(1982年か83年でしたか?)にプレスされたものなのか、Made in UKと記載されていて音量が非常に小さいです。
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